KOBANは昭和の匂い

veatrice2010-02-04

そういうわけで「路上ひったくり被害」を初体験したわけですが、ってことは同時に「警察で被害届を出す件」も初体験したわけです。

「派出所」って今は言わないんですね。KOBANって看板には書いてあります。国際化の時代ですからね。ところが「国際化」のほうは熱心なKOBANですが、21世紀のもひとつの潮流「IT化」の方は一向に進んでいなかったのですね。どびっくりしました。

私が路上でひったくられて交番に駆け込んだのが午後の10時55分頃。夜勤のおまわりさんと婦警さんのお二人がいらっしゃいました。他には対応している「客」はおらず、お二人が私1人につきっきりで対応して下さいました。

すぐに上の「警察署」に電話しパトカーにも連絡。逃げていく犯人をとっさに走って追いかけメガネが曇ってしまったので、残念ながら犯人逮捕につながるような手がかり(外見とか車両ナンバーとか)は一切提供できず、ただバイクが走り去った後の排気ガスが臭かった、くらいの無駄な印象しかお話できませんでした。

覆面パトカーで現場に戻り「こんな風にやられました」という「再現写真」を撮ったり(前後左右から写真をとられまるで自分が容疑者になったような気分になります)した後、再びKOBANに戻って「被害届」の書類の作成をしました。

これがまた、しっかりきっちり丁寧な仕事でした。私の供述をもとに書類を作成していくのですが、これが全部手書き。お役所仕事は正確さが大切なので、何度も聞き直して確認しながら記述していかれます。誤記は二重線で消して訂正印

しかし、定型フォーマットは既にあるようで、婦警さんは被害品目を暗記しているその定型文に当てはめていくだけのようでした。文書の最後には「このような事件に大変憤りをおぼえております。犯人が逮捕されたら厳重に罰していただけるよう強く望みます」という被害者の「気持ち」まで、すらすらと書かれました。

「あの私、別に、厳重に罰してもらいたいなどと思ってませんし、言ってもいませんけど。」と言うと「はあ?」ときょとんとされちゃいましたが。ずっと昔に遠藤周作が空き巣に入られた時にテレビから泥棒に向かって「盗んだ金を有効に使って更生してほしい」というような趣旨の事を言ってたことを思い出したりしてたものですから。しかしまあここでむやみに主張して書き直してもらったらかかってしまう時間を考えて、そのまま書いてもらいましたけど。

で、疑問に思ったのは、被害者の「感情」まで定型文になっているのなら、具体的な品目や金額だけ空所の「被害届:ひったくりの場合」のフォーマットにワープロで記入していけば時間が短縮できるのに、どうしてしないのかなぁ、ということです。結局、書類作成に1時間半かかり私が交番を出たのは午前2時近くでした。おまわりさんが自転車を押して、家まで送って下さいました。

幸い翌日にひったくられた鞄が見つかったと連絡があり、夜またKOBANに引き取りに行きました。今度は、おまわりさんが5人待機していらっしゃいました。前日とはシフトが違うので別の5人です。そのうちのお二人が私の担当でした。婦警さん1人が戻ってきた鞄の中身の品目を一つ一つ全部写真を撮り、犯人の指紋があるかもしれないのでアルミニウムの粉をふりかけて指紋をとる作業をしていきます。

今回の書類作成は、まだ20代の新米?と思えるおまわりさんでした。もう一度最初から昨夜と同じことをお話し、被害届は出したけれど無事見つかって返ってきた品物(現金以外は全て戻ってきたので、鞄の中身を全部)を確認しながら一つずつ全部もう一度書いていきます。中で2点だけ私の記憶違いがあり(手帳の表紙の色と未使用の回数券の枚数)それが昨夜の書類と異なってしまうのですが、この若いおまわりさんは、その点をどう記述したらよいか、よくわからないようです。おやおや困りましたね。う〜んとうなってペンが止まっています。

すると、外見的にいかにも「切れ者」風の先輩格のおまわりさんが「まず、この二点を先頭の段落に書いて、その後にこっちの書類を参考にそのまま書いていけばいいんじゃないかな」とかって書類作成のアドバイスをしてOJTを始めちゃいました。なんと麗しい光景でしょう。

そんなこんなで、夜の8時に行って退出できたのは10時半すぎになっていました。今回も2時間半かかりました。
書類にサインだけして、30分くらいで帰れると思ってた私が「非常識」でした。結局、たかが3000円のひったくり被害の事務処理に5時間かかりました。とてもいい勉強になりました。もう二度とひったくりには遭いたくありません。

それにしても、KOBANはとてつもなく情報処理の効率が悪いところでした。おまわりさんの一日の仕事のかなりの部分は「書類書き」に費やされているだろうと想像できます。もっとほかにやるべきことはないのでしょうか?

ないのかもしれません。その昔「ひまわりさん」と呼ばれていた婦警さんは、路上駐車違反の車のタイヤにチョークでマークすることが重大任務だったけれど、今やそれもアウトソーシング。フリーハンドで書類でも書いてないと仕事がないのかもしれません。

やっぱりなんだかんだ言っても日本は平和なんです。「少年の凶悪犯増加!」っていうのは、マスコミが煽った誤ったイメージなだけで、統計上は昭和30年代に比べれば、うんとずっと減ってるし。

KOBANが情報処理の効率化を図らなくちゃ仕事がやってけなくなるようなヤバイ世の中ではない、という事がわかって、今回は本当に貴重な体験ができてよかったです。